
「株主総会での説明だけで十分だろうか……」「個人投資家にどう情報を届ければいいのか分からない……」。IR担当者の中には、こうした悩みを抱える方も少なくありません。
投資家とのコミュニケーションでは、決算発表や株主総会などの一度きりの情報提供だけでなく、個人投資家や株主と継続的に接点を持ち、企業への理解を深めてもらう仕組みを整えることが重要です。
特に、IRサイトや説明会、動画、SNSなど複数の媒体を組み合わせることで、それぞれの接点で異なる情報を届けながら、継続的なコミュニケーションにつなげられます。
本記事では、投資家コミュニケーションを強化するための具体的な方法から、IR動画を活用して情報を分かりやすく伝えるポイント、継続的な発信を実現するための運用方法まで解説します。
投資家コミュニケーションとは?「情報発信」と「対話」を継続する考え方
投資家コミュニケーションとは、企業が投資家や株主に対して企業情報や経営方針などを伝え、理解を深めてもらうための継続的な情報発信・対話を指します。
IR・広報・PR・SRにはそれぞれ異なる役割がありますが、今回の記事では、それぞれの違いを詳しく解説するのではなく、個人投資家や株主との接点をどのように継続させるかという点に焦点を当てます。
投資家とのコミュニケーションでは、決算発表や株主総会などの特定のタイミングだけで情報を届けるのではなく、日頃から企業について知ってもらえる環境を整えることが重要です。
一度きりの情報提供で終わらせないことが重要
企業から投資家への情報提供には、決算発表、IRサイト、説明会、メール、動画などさまざまな手段があります。
しかし、これらを個別に運用しているだけでは、それぞれの情報が単発で終わってしまうことがあります。
たとえば、決算説明会を開催した後に説明内容を動画として公開し、さらにIRサイトに関連資料を掲載することで、説明会に参加できなかった投資家にも情報を届けられます。
複数の接点をつなげて情報を届けることが、継続的な投資家コミュニケーションを設計するうえでのポイントです。
なぜ個人投資家・株主との接点は一度きりになりやすいのか
投資家コミュニケーションを継続したいと考えていても、実際には「決算発表のタイミングだけ」「株主総会の時期だけ」といった発信になってしまうケースがあります。
その背景には、発信する情報を毎回ゼロから考える必要があることや、媒体ごとの役割が整理されていないことなどが挙げられます。
- 発信する情報が整理されていない:決算や経営方針など、何を継続的に伝えるのかが決まっていないと、発信が単発になりやすくなります。
- 媒体ごとの役割が曖昧:IRサイト、動画、SNSなどをそれぞれ独立して運用すると、情報が分散してしまいます。
- 発信スケジュールが決まっていない:発信のタイミングを都度検討していると、継続すること自体が負担になりやすくなります。
こうした課題を解決するには、「誰に・何を・どのような方法で伝えるか」を継続的に設計することが大切です。
個人投資家・株主との継続的な接点をつくる5つの方法
ここからは、投資家とのコミュニケーションを継続するための具体的な方法を紹介します。
1. 決算発表を起点に情報発信をつなげる
決算発表は、投資家との重要な接点のひとつです。
決算資料を公開するだけで終わらせず、決算説明会や説明動画、IRサイトの記事などに情報を展開することで、同じ内容を異なる形式で届けられます。
たとえば、決算資料では数字を確認できるようにし、動画では経営者が業績の背景や今後の方針を説明するといった役割分担が考えられます。
一つの情報を複数の接点に展開する仕組みをつくることで、発信担当者の負担を抑えながら継続的な情報提供につなげられます。
2. IRサイトに情報を蓄積する
IRサイトは、投資家が企業情報を確認するための基盤となる場所です。
決算情報だけでなく、経営方針、事業内容、代表メッセージ、説明会資料、IR動画などを整理して掲載することで、投資家が必要な情報を確認しやすくなります。
また、過去の情報を蓄積しておくことで、投資家が企業の変化や取り組みを継続的に確認できる環境を整えられます。
3. 経営者・担当者の言葉を届ける
決算資料やIR資料では、業績や数値などを正確に伝えることが重要です。一方で、経営者が何を考えているのか、今後どのような方向を目指しているのかといった情報は、文章や数字だけでは伝わりにくい場合があります。
そこで活用できるのが、経営者メッセージやインタビュー動画です。
経営者自身が言葉で説明することで、経営方針や事業に対する考え方を伝える接点をつくれます。
4. SNS・ショート動画で接点を増やす
長尺のIR動画だけでなく、短時間で視聴できるショート動画を活用する方法もあります。
たとえば、決算説明動画の内容から重要なポイントを抜き出したり、事業内容やサービスの特徴を短く紹介したりすることで、動画を見るきっかけをつくれます。
SNSなどを活用する場合は、詳細な情報をすべて動画内で説明するのではなく、詳しい情報を確認できるIRサイトや動画へ誘導する役割を持たせることも有効です。
ショート動画マーケティングの考え方も参考にしながら、媒体ごとの役割を整理しましょう。
5. 投資家からの反応を次の発信に活かす
投資家コミュニケーションでは、発信して終わりにするのではなく、その後の反応を確認することも重要です。
説明会や問い合わせなどで多く寄せられた質問があれば、次回のIR資料や動画のテーマとして取り上げることができます。
こうしたサイクルを繰り返すことで、投資家が知りたい情報を把握しながら、継続的に発信内容を改善できます。
投資家との接点を継続するための5つの方法
| 方法 | 主な役割 | 活用例 |
| 決算発表 | 業績・今後の方針を伝える | 決算資料・決算説明会 |
| IRサイト | 情報を蓄積・整理する | 決算情報・IR動画・経営情報 |
| IR動画 | 文章だけでは伝わりにくい内容を補足する | 決算説明・経営者メッセージ |
| SNS・ショート動画 | 情報に触れるきっかけをつくる | 事業紹介・IR情報のポイント紹介 |
| 説明会・対話 | 直接的なコミュニケーションを行う | 個人投資家向け説明会・質疑応答 |
投資家コミュニケーションに動画を活用するメリット
投資家への情報発信では、決算資料やIRサイトなどのテキスト情報が重要な役割を持ちます。一方で、情報量が多くなるほど、投資家が内容を理解するまでに時間がかかる場合があります。
動画を活用すれば、話し手の声や表情、図解などを組み合わせながら情報を伝えられます。
特に、経営者の考えや事業の特徴など、文章だけでは伝わりにくい情報を届ける際に活用しやすいでしょう。
動画で伝えられる情報を整理する
| 動画の種類 | 主な内容 | 伝えやすい情報 |
| 決算説明動画 | 業績・決算内容・今後の方針 | 業績の背景や今後の方向性 |
| 経営者メッセージ | 経営方針・事業への考え | 経営者の考えやメッセージ |
| 会社紹介動画 | 事業内容・サービス・強み | 企業・事業への理解 |
| 事業紹介動画 | 事業モデル・提供価値 | サービスの特徴や仕組み |
| ショート動画 | 情報の要点・トピック | 情報を知るきっかけ |
IR動画は「一度作って終わり」にしない
IR動画を活用する際に意識したいのが、動画を単発のコンテンツとして扱わないことです。
たとえば決算説明動画を制作した場合、その動画をIRサイトに掲載するだけでなく、動画の一部を短尺コンテンツとして活用したり、関連する決算資料と一緒に掲載したりすることができます。
また、次回の決算発表や説明会でも同じフォーマットを活用すれば、継続的な動画制作につなげやすくなります。
継続的な発信を前提に動画を設計することで、株主や個人投資家との接点を一度きりで終わらせない仕組みをつくれます。
投資家との対話を深める動画コンテンツの作り方
誰に向けた動画なのかを明確にする
IR動画を制作するときは、最初に視聴者を明確にすることが重要です。
個人投資家向けなのか、既存株主向けなのかによって、必要となる情報の粒度や説明方法は変わります。
特に個人投資家向けの場合は、専門用語を並べるのではなく、事業内容や業績のポイントを分かりやすく整理することが大切です。
一つの動画に情報を詰め込みすぎない
「せっかく動画を制作するのだから、できるだけ多くの情報を入れたい」と考えることもあるでしょう。
しかし、情報を詰め込みすぎると、動画全体のメッセージが分かりにくくなります。
決算説明、事業紹介、経営者メッセージなど、動画ごとに伝えるテーマを一つに絞ることで、視聴者が内容を理解しやすくなります。
決算・株主総会などのタイミングと連動させる
動画を継続的に活用するためには、制作するタイミングをあらかじめ決めておくこともポイントです。
たとえば、以下のように年間スケジュールに組み込むことができます。
- 決算発表時:決算内容や今後の方針を説明する動画
- 株主総会前後:経営方針や事業について説明する動画
- 新サービス発表時:事業内容やサービスの特徴を紹介する動画
- 定期発信:経営者メッセージや事業トピックを紹介する短尺動画
このように発信のタイミングを決めておけば、毎回「次は何を発信するか」と一から考える必要がなくなります。
発信後の反応を確認する
動画を公開した後は、再生数だけでなく、どの部分が見られているのか、どのような質問が寄せられたのかなどを確認しましょう。
視聴者の反応を次回のコンテンツ制作に反映することで、投資家が理解しやすい情報発信へと改善できます。
個人投資家・株主との接点を継続させるための運用ポイント
1. 発信する情報をあらかじめ整理する
まずは、自社が投資家に継続的に伝えたい情報を整理しましょう。
- 業績:決算や業績の変化
- 経営方針:中長期的な方向性
- 事業内容:サービスや事業モデル
- 成長に向けた取り組み:新規事業や今後の施策
- 経営者の考え:企業経営に対する考え方
発信するテーマを整理しておくと、動画・IRサイト・説明会など、媒体ごとのコンテンツを企画しやすくなります。
2. 媒体ごとの役割を決める
すべての媒体で同じ情報を発信するのではなく、それぞれの役割を決めることも重要です。
たとえば、IRサイトは情報を蓄積する場所、動画は理解を促すコンテンツ、SNSは情報に触れるきっかけというように整理できます。
媒体ごとの役割を明確にすることで、複数の接点を一つのコミュニケーションとして設計できます。
3. 発信スケジュールを決める
継続的なコミュニケーションを実現するには、発信を担当者の都度判断に任せないことも大切です。
年間の決算スケジュールや株主総会などを起点に、どのタイミングでどのコンテンツを公開するのかを整理しておきましょう。
| タイミング | 発信内容 | 活用媒体 |
| 決算発表 | 業績・今後の方針 | 決算資料・説明動画・IRサイト |
| 決算後 | 決算内容のポイント | ショート動画・SNS |
| 株主総会前後 | 経営方針・事業内容 | 説明会・動画・IRサイト |
| 定期発信 | 事業トピック・経営者メッセージ | 動画・SNS・IRサイト |
4. 発信後の反応を確認する
コンテンツを公開したら、その反応を確認し、次回の発信に活かします。
たとえば、動画の視聴状況や説明会で寄せられた質問、問い合わせ内容などを整理することで、投資家がどの情報を必要としているのかを把握する材料になります。
このサイクルを繰り返すことで、一度きりの情報発信ではなく、継続的に改善される投資家コミュニケーションを構築できます。
投資家コミュニケーション動画を外注する際の注意点
IR動画を継続的に制作する場合、社内だけですべての企画・撮影・編集を行うことが難しいケースもあります。その場合は、動画制作会社への外注も選択肢の一つです。
目的と活用先を最初に伝える
動画制作を依頼するときは、単に「IR動画を作りたい」と伝えるだけではなく、誰に向けて、何を伝え、どこで公開するのかを整理しておきましょう。
たとえば、IRサイトで公開する決算説明動画と、SNSで発信するショート動画では、適した構成や尺、演出が異なります。
動画制作の基本ガイドも参考にしながら、制作前に目的や活用方法を整理しておくことをおすすめします。
継続制作を前提に企画する
一度だけ制作するのではなく、今後も継続して動画を活用するのであれば、シリーズ化できる構成にしておくことも重要です。
決算説明動画や経営者メッセージなど、定期的に制作するコンテンツは、フォーマットをある程度統一しておくことで、企画・制作を効率化できます。
また、撮影した素材を複数のコンテンツに展開できるように設計すれば、1回の撮影から複数の発信につなげることも可能です。
具体的な構成を考える際は、映像制作の構成案の作り方も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
投資家コミュニケーションでは何を発信すればよいですか?
決算や業績だけでなく、事業内容、経営方針、成長に向けた取り組み、経営者の考えなど、企業への理解につながる情報を継続的に発信することが重要です。
IR動画はどのような内容に向いていますか?
決算説明、経営者メッセージ、会社紹介、事業紹介などに活用できます。特に、文章や数字だけでは伝わりにくい内容を、映像や音声を使って補足したい場合に活用しやすいでしょう。
IR動画は毎回新しく制作する必要がありますか?
必ずしも毎回ゼロから企画する必要はありません。定期的に発信するコンテンツは、フォーマットを決めておくことで、継続的に制作しやすくなります。また、一度撮影した素材を複数のコンテンツに展開する方法もあります。
個人投資家向けの動画では何を意識すればよいですか?
専門用語を多用せず、事業内容や業績のポイントを分かりやすく整理することが重要です。また、動画の目的を明確にし、一つの動画に情報を詰め込みすぎないこともポイントです。
動画だけで投資家とのコミュニケーションを完結できますか?
動画だけですべての情報を伝えるのではなく、IRサイト、決算資料、説明会などと組み合わせて活用することが重要です。それぞれの媒体の役割を整理し、複数の接点を継続的につなげることが、投資家コミュニケーションを強化するポイントです。
まとめ
投資家コミュニケーションを強化するには、決算発表や株主総会などの一度きりの情報提供だけで終わらせず、個人投資家や株主との接点を継続的につくることが重要です。
そのためには、決算発表を起点としてIRサイトや説明会、動画、SNSなど複数の媒体を組み合わせ、それぞれの役割を明確にすることがポイントになります。
なかでもIR動画は、決算内容や事業内容だけでなく、経営者の考えや事業の背景など、文章だけでは伝わりにくい情報を補足できる手段として活用できます。
また、一度動画を制作して終わりにするのではなく、決算や株主総会などのタイミングと連動させ、継続的に発信できる仕組みを整えることが大切です。
投資家とのコミュニケーションは「何を伝えるか」だけでなく、「どの接点で、どのように継続して伝えるか」まで設計することが重要です。
IR動画の企画や制作方法について詳しく知りたい方は、動画制作会社の選び方も参考にしてください。
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