コラム

2015年12月24日

見逃し配信「TVer」、好調の理由とテレビ局のジレンマ

西田 宗千佳; ジャーナリスト

posted by 西田 宗千佳; ジャーナリスト

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10月末、在京民放キー5局がスタートした、テレビ番組見逃しポータル「TVer」が好調です。当初は「年度内にアプリが100万ダウンロードに達すれば」という予想でしたが、スタートから3週間後の11月19日、累計100万ダウンロードを突破しました。これは関係者にとっても予想外のことで、想定の5倍近くのスピードでの達成、ということになります。

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TVerは、テレビ番組を放送から一週間の間、動画広告を見る代わり、無料で視聴できるものです。放送されたときに見逃した番組を視聴できることから「見逃し配信」「キャッチアップTV」などと呼ばれます。

今回TVerが成功した裏には、同時期にTBS系列で放送されたドラマ「下町ロケット」が大ヒットし、それをもう一度見たい、見逃したので来週までに見たい、と思った人が多かった、という事情もあります。

TVerはPCとスマートフォン・タブレットに対応しており、主にはスマホアプリで視聴されています。アプリからは5社の番組が、日本中どこからでも視聴できます。

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実はTVer、正式には「見逃しサービス」ではなく「ポータルサービス」です。TVerによってはじめて見逃し配信を知った、という人も多いのですが、実際には、各民放キー局は2014年から、それぞれ独自に見逃し配信をやっていました。

それらへの道筋をつけ、特に、テレビを自室に持たない若い層に番組への接点を作るのが、TVerの狙いです。なので、各社が公開する動画を「紹介する」立場ということで、「ポータル」と呼ばれています。

もう一つ、TVerがポータル、という呼称になっている理由があります。TVerは動画広告で運営されていますが、視聴に伴う広告費は、TVerではなく「各テレビ局」が受け取るようになっています。

広告動画を入稿するためのフォーマットや仕組みの統一も、TVerの仕事でした。ここでも各局への橋渡し役に徹しています。

民放は、CMからの広告料を原資にビジネスをしています。そういう意味では、動画広告を原資に見逃し配信を行うことは、放送と同じビジネスモデルの導入ですから、自然な形ともいえます。

これまで、日本の民放は番組のネット配信に冷淡な態度をとり続けてきました。テレビとの競合が大きい、と考えていたためです。

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しかし、放送の視聴率が落ち込み、広告収入も落ち込み始めると、ネットを敵にしているわけにもいかなくなりました。

一方で、見逃し配信に積極的になってきた裏には、「録画視聴よりはいい」という気づきもあったのです。録画視聴は、まだネット視聴よりずっと一般的です。

しかし、録画視聴ではCMはスキップされがちですし、狙った人に広告を見せるのも難しくなっています。見逃し配信では動画広告をスキップできない仕組みがあり、視聴している人の属性に合わせた広告配信もできますし、なにより、視聴者数をきちんとカウントできます。

消費者目線でいえば録画には録画の良さがあるのですが、放送局としてはまた別の見方があるわけです。

しかし、見逃し配信には、まだまだジレンマもあります。現状、民放による見逃し配信はスマホ・PCだけで展開されており、テレビのネット動画視聴機能には対応していません。

理由は、「テレビCMとネット動画広告の広告費をどう評価すべきか」が定まっていないためです。視聴者から見れば「同じテレビの上の動画」でも、配信経路が違えば費用も変わってきます。

現状、圧倒的に高いテレビの広告費を「落とさない」ことが、テレビ局の至上命題であり、安価ですが人にマッチさせやすく、再生回数も多くなる動画広告とのバランスが見えません。

日本においては、当面この問題を軸に、テレビ局と広告会社、ネット企業の間での綱引きが続くでしょう。
(文=西田宗千佳)

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