日清カップヌードルのブレないブランディングと動画マーケティング

世の中を見渡してみると、商品が出てこない広告があふれています。

何かを売るために行っているはずの広告。

商品を語らずに、広告は売上げに貢献できるのでしょうか?

今回はブランディングという視点から、広告を考えてみます。

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2024/11/2812:00-13:00

毎年変わる「メッセージ」と、連動してブレる「ブランドイメージ」

ブランディングという名目で、短期的な売上げを目標としない広告が数多く展開されています。強力なブランドを作り上げることで、将来の売上げに貢献することを見据えています。

もちろんブランドを構築することができれば、それは大きな武器となります。将来的に売上げに貢献する可能性も非常に高いです。

しかし、ブランド構築が目的と言いつつ、実際にはブランド構築に至っていないケースが多く見受けられます。

なぜか?

それはブランド構築が、長期的なイメージ蓄積の産物だからです。

1度や2度、広告を打っただけでは、ブランドは作れません。

長期間にわたり、一貫したブランドイメージを発信し続けて初めて、消費者の中にブランドが構築されます。
指と指
ブランド構築を通じて10年後の売上げに貢献したいのであれば、10年間一貫したイメージを発信し続けなければならないのです。

しかし現実には、マーケット環境の変化や経営陣の入れ替えなどにより、伝えたい「メッセージ」が変わり、それにつられて発信する「ブランドイメージ」まで変わってしまうケースが見られます。

どんな事情があるにせよ、発信するブランドイメージが変わってしまっては、ブランドを積み上げられないことは間違いありません。

「メッセージ」は変わっても失われない「ユニーク」さ

長期間、一貫したブランドイメージを発信し続けることができない企業が多い中、環境の変化などに負けずにブランドイメージを積み重ねてきたブランドがあります。

日清が誇るロングセラー商品、カップヌードルです。

カップヌードルはブランドイメージとして「ユニーク」であることを重視しています。

「ユニーク」であることで、印象的かつポジティブなイメージを消費者の間に構築してきているのです。

その為、広告キャンペーンも「ユニーク」なイメージを作り上げるコンテンツとなっています。

1992年

『Hungry?』キャンペーン

1992年にカンヌ国際CMフェスティバルでグランプリを受賞した有名な作品です。

CG技術を積極的に取り入れ、お腹を空かした原人たちをユーモラスに描いています。

今でこそ当たり前になったCG技術ですが、当時としてはまだ目新しく、視聴者にとても印象的に映ったはずです。

しかも、そんな当時の最新技術を駆使しながら描いているのは、原人たちがマンモスを追いかけるという、一風変わったシーン。

非常に「ユニーク」かつ印象的な形で、「腹が減ったらカップヌードル」というメッセージを描いています。

1999年

『20世紀カップヌードル』キャンペーン

こちらも印象的なTV広告キャンペーン。

20世紀を代表する様々な場面の中に、カップヌードルを食べるシーンを合成させています。

例えば上記は、ソ連のゴルバチョフ書記長がテーマになっています。

1991年まで存在した20世紀の超大国ソ連、その最後の指導者であるゴルバチョフの事は、当時は誰もが鮮明に覚えていました。

そんなゴルバチョフが演説している横でカップラーメンを食べているなんて、どれだけ強烈なインパクトがあったことでしょう。

コミカルな動きも相まって、「カップヌードルは21世紀品質へ」と言うメッセージが、とても「ユニーク」なイメージと共に、印象に残ります。

2013年

『SURVIVE!』キャンペーン

比較的最近のキャンペーンなので、覚えている方も多いかもしれません。

若者のカップ麺離れを意識してか、メッセージは「これからの時代を生きる若者たちに、困難に立ち向かい乗り越えていってほしい」というものになっています。

メッセージ自体は別段珍しくもないのですが、ストーリーや演出が飛びぬけて「ユニーク」です。

ここで紹介しているのは、就職氷河期篇。

2009年のリーマンショック以降、就職難が続いていた日本で、ターゲットである若者に良く刺さるテーマです。

そんなシリアスなテーマを、突飛なシチュエーションとセリフの組み合わせで、楽しくて笑える「ユニーク」な作品に仕上げています。

カップヌードルの「らしさ」

『Hungry?』キャンペーンから『SURVIVE!』キャンペーンまで、実に20年以上の月日が流れています。

当然、時の流れと共に、それぞれのキャンペーンで発信するメッセージ自体は移り変わっています。

ただ、カップヌードルが見事なのは、どのキャンペーンにおいても「ユニーク」なイメージを失わなかったことです。

冒頭でも述べましたが、伝えたいこと(=メッセージ)は様々な要因によって変わっていきます。それはカップヌードルでも同じです。

ただ、ブランドイメージを構築するためには、一貫したイメージの下でメッセージを発信し続けなければなりません。その一貫したイメージがカップヌードルの場合、「ユニーク」さだったのです。

どんなメッセージであっても「ユニーク」であることを忘れない。

この積み重ねがあるからこそ、カップヌードルが広告キャンペーンは「カップヌードルらしい」と言われるようになったのです。

将来の売上げにつながらないブランド広告には意味がない

ブランディングを行ううえで忘れてはいけないこと。それは、将来の売上げに貢献するためにブランディングを行うということです。

慈善事業でもない限り、全ての企業は営利目的で活動をしています。営利目的とは、儲けるということ。

直接的であれ、間接的であれ、売上げに繋がらなければ、意味がないのです。

ブランディングは、ブランドに特定のイメージを定着させることです。その結果として、競合商品との差別化を図り、売上げに貢献する。

そこにブランディングの意味があります。

では、ブランドにイメージを定着させるためにはどうすればよいのか?カップヌードルのように、ブレないイメージを発信し続けるしかありません。
歯車のイメージ

マーケティング責任者が変わるたびに発信するブランドイメージが変わうようでは、イメージが定着するはずがないのです。

繰り返しになりますが、時代や状況に応じて「メッセージ」を変えるのは、良いことです。ただ、どういう「イメージ」の下でその「メッセージ」を発信するのかは、ブレてはいけません。

一貫した「イメージ」を通じて将来の売上げに貢献することができないのであれば、そのブランド広告はドブに金を捨てているのと一緒なのです。

まとめ

ブランドを構築するには、まず消費者にどういうイメージを持ってもらいたいのかをクリアにする必要があります。

その上で、覚悟を決めなければなりません。長期間にわたって、同じイメージを発信し続ける覚悟です。

どの時代に、どんなメッセージを発信する場合でも、イメージだけはブレさせない覚悟。

もし覚悟を決めきれないのであれば、ブランディングに使おうとしている予算を、値引きなりセールスプロモーションなり、直接的に売上げに貢献する施策に割り振ったほうが効果的です。

しかし一方で、ブランドイメージを定着させることに成功できたなら、それは将来、かけがえのない資産になるでしょう。

モノがあふれて競合との差別化が難しくなっている今の時代。長い時間をかけて築きあげたブランドイメージは、簡単には真似できない強力な武器になります。

ブランディングには長期的なビジョンと覚悟が必要ですが、それだけの価値があるのです。
(文:Scott Nomura)

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参考記事

AdverTtimes:ブランドとのエンゲージメントを強化するカップヌードルのデジタル戦略——SIMC2014レポート

執筆者

VIDEO SQUARE編集部
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