ワンダーコアCMから学ぶ認知率の上げ方

メディアも多様化し、コンテンツもあふれている時代。自分の生活を思い返してみても、毎日たくさんの情報が流れ込んでくると強く感じます。

しかし、あまりに多くの情報に触れているため、記憶に残るものは、ごくごく一部です。

今回は、情報過多の時代において、どうすれば動画広告を消費者の記憶に残すことが出来るのか、考えてみたいと思います。

一回見ただけでは認知されない

そもそも、毎日、大量の広告に触れますが、そのうちの何割くらいが記憶に残るのでしょうか?

野村総合研究所が実施した調査によると、TVCMを1回だけ見た人の認知率は16%、10回で39%、20回で50%となっています。

グラフを見ると、接触回数10回あたりを境に認知率の伸びは鈍化していることが分かります。ある程度の認知を獲得したいのであれば、10回以上視聴者に見てもらう必要があるとも読み取れます。

10回接触した場合のテレビCM認知率
(参考:野村総合研究所 Insight Signal Data Service 『10回接触した場合のテレビCM認知率』)

また、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムは、ネット広告の接触回数と認知率の関係について調査を行っています。その調査によると、ディスプレイ広告の場合、1回の接触で38%、5回で53%、10回で60%の認知率が獲得できるとのことです。

TVCMと違いネット広告では、ターゲティングにより広告が表示される相手が絞られています。狙いを絞ったターゲットの中で50%以上の認知率が欲しいとすると、5回以上の接触を狙っていく必要があるということになります。

スマートフォンに関する調査

参考:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社『スマートフォンに関する調査』

いずれの調査においても、1回の接触では消費者に認知率されない可能性が高い、ということが分かります。そして認知されなければ、どんな良質な動画コンテンツも、広告としての役割は果たしません。

ワンダーコアのクロスメディア戦略

認知の獲得が難しく、そしてモノが売れないと言われている時代。そんな中で、意外なほどの売れ行きを見せている商品があります。

通信販売を手掛けるショップジャパン(運営:オークローンマーケティング)が販売している「ワンダーコア」です。

ワンダーコアは「倒れるだけで腹筋!」というキャッチコピーで売られている腹筋マシン。2014年1月の販売開始から順調に売り上げを伸ばし、100万台以上の販売台数を誇ります。

いったい何が、ワンダーコアの躍進を支えたのでしょうか?

大きな理由の一つに、ワンダーコアが従来のインフォマーシャル(通販番組)の枠にとらわれず、様々なメディアを活用して消費者にアプローチしたことが挙げられます。

従来、通販番組の基本は、TVでインフォマーシャルを流し、それを見た消費者が電話などを通じて商品を購入するというものでした。

しかし同社は、インフォマーシャルだけでは、リーチできる層も回数も限られてしまうと判断。様々なメディアを組み合わせる戦略をとりました。いわゆるクロスメディア戦略です。

話題となったTVCMはもちろんのこと、トレインチャンネルや屋外ビジョン、WEB広告、果てはCMを体感できるPRイベントまで行っています。

ワンダーコアCM 「倒れるだけで・冬」編(30秒)

ワンダーコアイベント動画 「みんなでつくった倒れるだけ100連発動画(8月6日篇)」

TVやPRイベントを通じて、メインターゲットである30-40代など、インフォマーシャルだけでは接触することのできない層にリーチすることに成功しています。

また、多様なメディアを併用することで、ターゲットと様々な場面で接触。当然、接触回数も増え、CMの認知率も上昇しました。

その結果、CMを認知した人が動画をシェアし、さらに多くの人がCMに興味を持つというサイクルが生まれ、企業CMとしては異例の200万回以上の再生回数を達成しました。

ターゲットとのタッチポイントを増やし、CMが認知され、話題となる。それが更なるタッチポイントに、という好循環が、ワンダーコアの高い認知率と爆発的な売り上げにつながったのです。

非常に効率的かつ効果的な、クロスメディア戦略と言えます。

デジタル時代のクロスメディア

ワンダーコアの場合、マス、デジタル、イベントなど、様々な形態のメディアを組み合わせて効果を上げていました。

ただ、キャンペーンの特性や予算の都合上、デジタルだけで展開するケースもあると思います。当然、そういった場合でも、ターゲットとの接触回数は多いほうが認知率は向上させやすいです。

デジタルにおける代表的なクロスメディアは、複数のソーシャルメディアを組み合わせた動画展開です。

ソーシャルメディア間のクロスメディアでは、お金を払うことで露出を確保できる部分よりも、ユーザー間で拡散されて露出する部分の方が大きいという点が、従来のクロスメディアと異なります。

動画の時事性やコンテンツのクオリティによって、ユーザーにシェアしたいと思わせる工夫がなければ、ターゲットに動画が届かない可能性があるということです。

ここで、デジタルだけのクロスメディアで成功を遂げたNikeの例を見てみたいと思います。

まだ記憶に新しい2015年女子ワールドカップ。NikeはYoutubeの公式アカウントに動画を公開しました。

アメリカ代表を応援する内容ですが、センスの良い音楽と物語を感じさせる映像を、1分強の尺に収めています。

Nike 「American Women」

Nikeはこの動画を、6月9日のアメリカ代表初戦に合わせて公開。FacebookやTwitterの公式アカウントも活用して拡散しました。

これから激しい戦いに足を踏み入れるアメリカ代表に世界が注目している中、絶妙なタイミングで公開された動画は、瞬く間に広がりました。

トータルで約150万回再生、Youtubeで1,000以上のグッド、Facebookで14,000以上のライク、Twitterで700以上のツイートを記録しました。

再生回数やライク数もさることながら、それぞれのソーシャルメディアのユーザーはオーバーラップしているため、接触回数増加にも大きく寄与することとなりました。

まとめ

動画広告は、しっかりと接点を増やして、繰り返し見てもらわなければ、認知されないのは上述の通りです。特にインターネットでは、なかなか同じ動画を繰り返し見てもらうことが難しい状況です。

デジタル時代に動画広告の認知を向上させるには、インターネットを一つのメディアとして捉えている限り難しいでしょう。そうではなく、各ソーシャルメディアやウェブサイトを別メディアとして捉え、クロスメディア戦略を行うという感覚が必要となりそうです。
(文:Scott Nomura)

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デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 『スマートフォンに関する調査』 (PDF)

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