コラム

2015年06月26日

【後編】業界トップの”Netflix”が示す、データドリブンの裏側

posted by VIDEO SQUARE 編集部

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前回の記事では、Netflixの概要や他社サービスとの差異といった基本的な情報をお伝えしました。

今回はNetflixのサービスが、世界最大手にまで成長する要因となったシステム部分やそのシステムを活用した映像制作方法について触れていきます。

Netflixを支えるシステム

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Netflixがシステム面において、特に注力しているものとして挙げられるのは「レコメンドエンジン」です。

2012年段階でNetflixのPV数のうち75%は、レコメンドエンジン経由をしていると言われており、映画のレコメンデーション技術の運用・改善に2014年10月の段階で300人の人員と年間1.5億ドルもの経費をかけていると言われています。

それだけ、Netflixにとって重要な技術であるレコメンドエンジン。そのレコメンドエンジンを支えるシステムとは、どのようなものなのかについて紹介します。

そもそもレコメンドエンジンとは

レコメンドエンジンは、Amazonや楽天などに表示されている「この商品を買った人はこんな商品も買っています」「この商品を見た後に買っているのは?」など、購買・閲覧履歴からユーザーの嗜好に合わせた商品を提案する技術になります。

現在では、ECサイトやNetflixなどの動画サイト、Webメディアなどでも「この記事・動画を見ている人はこの記事も見ています」といった形で幅広く利用されています。

レコメンドエンジンはあまりにも活用頻度の高い技術のため、ASPという形で国内で提供している会社も多く、ここ数年で「ブレインパッド」や「サイジニア」といった会社が国内で上場しています。

また、海外ではレコメンドエンジンを活用し、リターゲティング広告を提供している”Criteo”などが大型上場しています。

※Criteoは、Netflixが過去に開催していたレコメンドエンジンの精度や最適化を競うNetflix Prizeなどにも参加していた。

Netflixが取得するデータ

レコメンドエンジンを運用する上で一番重要になってくるのが、どのようなデータをもとに各ユーザーに対してパーソナライズするかになります。

基本的には、「商品のデータ」と「ユーザーの行動データ」に紐づけ、レコメンドすることで精度の高いレコメンドエンジンを実現していきます。そのため、自社サイトにおける最適化をする上で、データはより多く取得した方が良いと言われています。

そうした中、Netflixは、監督や出演者・制作者・制作国・制作年・受賞歴、さらには、主人公の社会的受容性など、考え得る「全て」の項目に関するデータを取得しています。

加えて、同社が取得するデータは、単に「ロマンティックかどうか(Yes/No)」だけでなく「ロマンスレベルを5段階評価する」といった形で、全てをグレード付けしています。

上記の商品データを基に、最適なカテゴリーを構築し、ユーザーの行動履歴から好むであろうカテゴリーの中から作品を紹介する形になっています。そしてNetflix上でユーザーが残す行動履歴は、先ほど同様の「全て」が分析対象となっています。

例えば、ビデオの再生パターン(一時停止・途中中断・巻き戻しなど)・評価スコア・検索履歴・視聴時間・視聴日時・視聴している地理的位置・視聴デバイス・Netflix上のページの閲覧やスクロールなど、行動の全てが分析されています。

そうしたデータを活用することで、ユーザーの行動を分析し、次にどの映画をオススメすれば視聴するのかを推測しているのです。

Netflixが進める自社映像作品の制作

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Netflixはレコメンドエンジンにより、ユーザーの離脱を防ぎ、滞在時間やエンゲージメントを増やし、検索しなくても自分の欲しい作品にたどり着くことができるといった、ユーザーにとって最高のユーザーエクスペリエンスを提供することに成功しました。

しかし、それだけに留まらず、同社は、そこで得た知見をもとに次なる一手を打ちました。それが「自社映像制作」です。

Netflixが取り組む、映像制作の事例とその効果

Netflixでは、これまでコンテンツを調達するのに30億ドル以上投じてきました。同社は適切なコンテンツを仕入れる際にもデータを活用していますが、プラットフォームにマッチするコンテンツを調達するのは非常に難しい作業です。

そうしたなかで同社が次なる一手として、あることに取り組みました。

Netflixは、ある視聴者の行動、興味を追うことによって、Kevin Spacey出演の作品で、David Fincherが監督をしている作品が好まれていることを導き出し、BBCのドラマ・”House of Cards”のリメイクを、David Fincher監督、Kevin Spacey主演で1億ドルを出資し、制作することにしたのです。

結果、本作品は、インターネット配信サービスの作品として初めてエミー賞の各賞や、ゴールデン・グローブ賞を受賞した作品になりました。しかも60万人以上の新規会員を獲得し、同社で初めて10億ドル以上の売上を上げることに成功しました。

つまり、蓄積されていた自社のデータを活用し、映像制作を自ら行うことで、ユーザーやプラットフォームに一番マッチする作品を作ることができるのです。

それだけではなく、自社で目玉コンテンツを作ることによって、コンテンツがユーザーを惹きつける媒体になるため、マーケティングコストを節約することができるのです。

その上、Netflixはサイトを最適化することで、ユーザーの好みを的確に分析し、”House of Cards”での成功を収めることができたのです。

“House of Cards”を制作する上で活用したデータ

先述の”House of Cards”の制作を決断するにあたって、Netflix社はどのようなデータに基いて決断したのかというと、以下の3つが挙げられています。

1.沢山のユーザーはDavid Fincherが監督を務めた”The Social Network”を最初から最後まで閲覧した
2.イギリス版の”House of Cards”も良く見られていた
3.イギリス版の”House of Cards”を見ていた人は、Kevin Spacey出演の作品とDavid Fincher作品を見る傾向が高い

Netflixの”House of Cards”の事例にみるデータドリブンな制作方法は、ハリウッドのドラマ作りを根本から変えるとまで言われており、非常にイノベーティブだと言われています。

一般的に、米国のドラマシリーズでは、制作サイドからTVネットワーク会社に企画が持ち込まれ、反応が良いとパイロット版が制作され、そこから1シリーズ単位の投資が決定されます。

しかしNetflixはパイロット版を見る前から、企画内容と多少の脚本だけで、制作が決まりました。加えて、Netflixは作品の脚本には口を出すことはほぼありません。過去にNetflixのコーポレートコミュニケーションの責任者Joris Ever氏に対するGuardian紙の取材でも、Ever氏は、高いレイヤーの話にしか口を出さないことを明言しています。

まとめ

Netflixは、優秀なレコメンドシステムにより作品の配信を行いつつ、そこで蓄積されたデータを活用し、より自社のユーザーに確度の高い作品を提供することに成功しました。

こうしたデータ活用はNetflixのような動画配信サービスのみならず、動画マーケティングという領域においても、日々、新しい手法が編み出されています。

テクノロジーの進歩により、さまざまなデータが取れるようになったからこそ、ユーザーに対して真摯に向き合い、最適な動画や広告の配信をすることが今後、求められていくのではないでしょうか。

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